夏が過ぎ二度の連休も空け切って閑散とした高速道路をしばらく西へ進んでいると、やがて前方に山が迫って来る。これは山麓ではなく多摩の丘陵であり、本来山と呼ぶべき稜線はもっと向こうにある。実際、目で見た高さに大きな差がある。
都心も密集住宅街も新興住宅地もとうに過ぎて、工場と工業団地ばかりが目につく。しかしそれは見晴らしの良い時だけで、たいていは殺風景な防音壁か、全国どこにでもありそうな大小の木々が車窓を繰り返し横切って行く。
カーナビゲーションシステムには帰すべき施設のない様子が表示されるようになるが、その段になっても景色の中には必ず人の作った何かがあるので、少しがっかりした。 しかし、そもそも人の手で切り開いた舗装道路を進んでいるのだから、何処にあっても人工物の絶えないことは当たり前なのかもしれない。
犬の好きな人しかいない場所で、しかも広々しているなどというのは困難な条件で、遠くてもそうした場所へ時間をかけて移動しなければならない。
切符だって必要になる。本日の主役は、残念ながら同伴犬という名の脇役として入場することになった。
コウちゃんは十二歳になったとは思えない元気な様子で、まずは体を慣らす。
小さな迷路を応用して、あれこれと遊んでみる。
上機嫌になる。
ヤギのいるのに驚いた。
アジリティの真似事にも挑戦してみる。
ますます上機嫌になる。
あれやこれやで延び延びになっていたが、今日こうして来ることができて良かった。
帰りに湖畔へ寄り、自称『日本一の伊達男コンビ』で日本一の山を背負ってみたが、器の大きさでは到底かないそうもなかった。
なんて遠くて、なんて大きいんだろうか。この辺りは四方を稜線に囲まれているけれど、やはり日本一。他の三方とは存在感が全く違う。
程なくお天道様は富士の向こうへ隠れてしまった。
この辺りでは日の暮れるというだけでこんな気持ちになってしまうのか。それでは毎日名作文学や名画が生まれてしまうのではないか。実際には筆舌尽くしがたいと言う陳腐な表現しか浮かばないけれど。
だ・か・ら~。
人のヒザを嗅いでる場合じゃないんだって(汗
ま、とりあえず次回も元気に行こうな、相棒♪
※文中に『本日』という表現を使いたかったので、意図的に13日当日の日付で書いています。
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